「……」

 数秒間の沈黙。それが俺の待ち受け画像を見たノマルさんの反応だった。
 無論、それが正常だと思っている。増してや可愛いだなんて言って欲しくもない。言わせもしない。それこそノマルさんがこれを見て可愛いなんて言った日には自分はどうなるんだろう。怒りで自分を見失う、共感者の出現に大いに喜ぶ、嫉妬心むき出しで今後彼と接する――幾つかの選択肢も出たが全てが在り得なさそうで、全てが在り得そうに思えた。そもそもどの道この目の前の男は別の男の物だから心配せずともいいわけだが。

「つこみも似たようなことやってやがる」
「あー、あいつこういうのやりそう」
「ったく……んなことして楽しいか?俺には理解出来ねぇよ、お前もつこみも」
「そりゃもう、幸せ」
「……悪趣味な奴」
「それ、そのまま君のカレシに返しといてくれる?」

 その時、俺は「ノマルさんみたいな男を好きになるあいつの趣味が分からない」といった意味合いの言葉で喋ったのだったが、彼も何となくそれを察したようで複雑な表情を浮かべていた。もちろん冗談込みだし彼もそれを承知しているようだが、やっぱりちっとも分からない。尤もどこに惚れたなんて質問は彼にするよりもあの関西弁外見小学生に聞くべきである。

「でも俺もそれは思う」
「誉さんは体が華奢だったり、性格も可愛いしね!」
「……会長を可愛いって目線でも、俺は見れないけどな」
「俺も時々何こいつうざって思うこともあるよ」
「俺もそう思われてることあるんだろうなあ」
「いや、それはない。」

 俺がいとも簡単に断言すると、ノマルさんはすっかり面食らっていた。おやまあこの人はなんて顔をするんだろう。逆に俺が面食らってしまった。お互い唖然とした表情のまま、何秒固まっていただろう、やがて俺が口を開いた。

「何、あんだけ愛されてて気づいてないとか、俺だけめっちゃ好きなんだろうなーとか?」
「……」
「バカ言うなよノマルさん。少なくとも俺が誉さん好きなぐらいあいつはノマルさんのこと好きだよ」
「…………真顔でンなこというなよ。アホか」
「説得力ないよノマルさん。茹蛸?犯すよ?」

 にかっとはにかんだ瞬間にノマルさんの体が強張った。いつもあいつもこんな風に笑ってるらしい。知りたくなかったかといえば知りたくはなかったが。
 ――お互い鈍感な人を好きになると苦労するもんだ。この場にはいないつこみに何となく同情の念を送りつけておいた。











他人様達事情 

(まあ、誉さんが一番可愛いけどね!)

















大ノマってありかなあと思いつつ書いてみたもの。書きづらかった(笑)

(081201)


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