元々自分は男が好きな人間ではない。それは知っている。今まで男を好きだと思ったことなどないし、むしろそんなことを考えるだけで背中の辺りがぞわぞわする奇妙な感覚に陥る。それは一種の偏見に近いものを持ち合わせていたからだと思う。男が男を好きになるなんざ在り得ないんだ。――なんて、何度繰り返せば気が治まるんだろう。馬鹿馬鹿しい、と何度自分を罵倒しても胸の奥にただ在る気持ちは一向に消える気配を見せない。むしろ、もっと火が大きくなる。何度鎮めようと思っても、心は言うことを聞かなかった。そしてその度に思い出す笑顔は、胸をただ締め付けるだけだった。途方に暮れて諦めがつくようなら、どれだけ良いことだろう。その可能性に賭けてみようともしたが、熱は一切下がろうとしない。嗚呼、煩わしい。
「……馬鹿、じゃねーの。俺」
たった一度手が触れただけでこんなに思い悩んでしまうなんて思わなかった。気があるわけがない。相手は男だ。俺も男だ。なのに、なのに。ただ苦しく募っていくだけの恋を、俺は胸に秘め続けることが出来るだろうかと不安に思った。不意に、心苦しさに涙が零れ落ちた。




最初で最後の恋
(自覚したくないけれど、あいつへの気持ちは、紛れもない恋だった。)



(090524)
伊月の熱が上がったときに書いてみたらなぜかこんな可哀想なことになった。
伊月並びにファンの方にひたすら頭を下げるしか。ないよね。




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