フォークが勢い良くぶっ刺された赤白のジューシィな兎ちゃんを漠然と眺めていると不意に視線が飛んできた。一瞬驚いた顔をした、のが演技だとバレないようにするのは至難の業だ。何となく、彼女は全てお見通しである気がするから。そんなオレの心情を知ってや知らずやヒルダさんはその兎を口へ運んだ。シャリ、と瑞々しい音が耳に滑り込んでくる。結構頑張って兎の形にしたけれど、無情にも魔族とやらには無関係らしい。
「うまいな」
「……どうも」
 林檎が美味いのか兎の形が上手いのかよく分からなかったが、まじまじと林檎を見つめていたから後者だと思案して一応お辞儀しておいた。オレの声は聞こえていないのか、ヒルダさんは林檎をあらん限り観察している。くつくつ笑っていると鋭い視線がもう一度オレの頬をかすめた。そしてそのまま、少し距離を置いた場所で遊んでいる二人(正確に言えば、男鹿)に視線が向けられた。不意に椅子が軋んだ。
「ヒルダさんって本当にアイツの嫁みたいですよね」
「何を」
「いや、別に不良どもの尻馬に乗るつもりはないんですけど」
 同情に近い眼差しが送られて、思わず今笑えているか不安になった。ははは、と次いで出た言葉も乾ききっている。視線を向ける先が見当たらなくて、一匹減った兎の群れを定まらない視点で眺めた。もう、何も見れなかった。

「アイツ色々と迷惑かけると思うけど、仲良くしてやってくださいね」
「……お前は、それでいいのか?」

 何でもお見通しな気がしていたのは、どうやら気のせいではなかったらしい。魔族という種族はそういう点に長けているのかどうか詳しくは知らないが何となく納得できた。オレは、笑えているのだろうか。そんなことないです、って笑えているのだろうか。奥でやけに楽しそうな二人の声が今日だけは殊の外耳障りだった。




答えなんてない
(答えを導いてはいけない)
(あの答えを、……オレは受け止めてはいけない)



なんか、古市の悲恋みたいになった。おかしいな…。
男鹿は出てないけどとにかくみんな男鹿が大好き!ということを主張したかった
私は古市が、大好きです。なので余計にこんな結果で申し訳ない。 でも男鹿と古市でいちゃいちゃしてるのを書けといわれても、それは無理に等しいです。(笑)

(090408)(090409)多少加筆修正


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